「職場の○○さんが育休取ったのに復職しないで辞めちゃった。なんか、ずるい」

先日、友人から聞かされたこんな愚痴。ずるい…のか?

みんなの意見が気になる!せっかくだから企画にしちゃえ。

そこで今回は、ライターで起業家のトイアンナさんをお招きし、育休後のキャリアについて伺いました。

キャリアライター

トイアンナ

慶応義塾大学を卒業後、外資系企業のマーケティング職として約6年勤務。その後独立し、恋愛・キャリアライターとして幅広く活躍中。書籍『確実内定』、『モテたいわけではないのだが』など。
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1. 育休後「復職しない」は許されない?

2020年の雇用均等基本調査によると、女性で8割、男性で1割が育児休業を取得

育休、どんどん取ろうよ!」という風潮を感じる方も多いと思います。(フランスにいたっては父親の育休が義務化されました)

そもそも育休は復職を前提とした休業制度ですが、いざ子育てがはじまると、

・保育園に入れられなかったら、今の仕事を続けられない…
・実際に育児が始まると大変すぎ。仕事と両立できる気がしない...

 と、制度と現実のギャップに苦しむ人が少なくありません。

そこで今回は、事例や賛否を問うたアンケートの結果をもとに、「育休後、復職しない」という選択肢について掘り下げます。

▼話題となった産休育休7年で退社の元NHKアナウンサーの事例

元NHKアナウンサー退職経緯

NHK看板アナ(当時39歳)が、産休・育休で休職後、復職せずに退職。ほぼ1年おきの出産で、その育休が7年間続いた。 期間中は、雇用保険から平均給与の50%~67%が支給される。

▼SNS上の声 

インタビュアー

この事例に関して、賛否が割れる形になりましたがトイさんはどう思われますか?

トイさん

わたしも会社で育休をとった方の分、仕事が増えた経験があるので、批判の声があがるのは理解できます。

 

ただ、人員補充がなくて他の社員に仕事が回ってしまうのは、その人のせいではなく会社の問題です。

 

育休後退職を選んだ個人が責められるべきではないと思いますね。

インタビュアー

彼女はのちにインタビューで、夫の仕事で海外に移住していたため、会社に勤務地などの配慮を求めたが認められなかったと話しています。

トイさん

日本では、まだ「わがままだ」と言われることがあるかもしれませんが、それほどめちゃくちゃな要求ではないと思います。

 

大きな企業ですし、受け入れる余地はあったはずです。

インタビュアー

不公平感を感じている方には、子どもを育てながら働く女性も多くいました。

トイさん

「自分は歯を食いしばって働いているのに、この人はぬくぬくと…」と感じる方もいるでしょうね。

 

ただ、この方はその代わり、

 

”7年のキャリアブランク”というリスクを踏んでいます。

 

例えばわたしは、7年の育休産休よりも働く方を選択すると思います。キャリアを失うことが怖いからです。

 

この方はキャリアを失うリスクがありながら産休育休をとったその選択の違いでしかないと思います。

インタビュアー

会社が育休産休をそれほど長く認めてくれない、お金も稼がないといけないという思いで復職する方もいるのでは?

トイさん

そういう人が怒るべきは待遇差別の方であって、個人ではないはずです。

 

育休後すぐに復帰するお母さんたちは睡眠時間3時間とかザラですよね。

 

でも、そもそもそんな状況の方が異常なんです。人を叩いたところで不公平な現状は変わりません

 

デモなり投票なり、怒りをぶつけるべきは待遇差別の方ですよ。

point
​​​​​​育休中は会社からの給与は出ない

基本的に、育休中は給与は発生しません。その代わり、雇用保険から給付金(給料の67%。6カ月以降は50%)を受け取れます。

 

この原資は会社と労働者が折半で払う雇用保険料です。

 

みんなはどう思ってる?
▼育休後復職しないのは制度の悪用か

男女200人アンケート

編集部が20代~70代の男女200人に「育休後復職しない」考えについて聞いたアンケートでは女性の8割、男性の6割が「アリ/どちらかといえばアリ」と回答しました。

育休後の退職に好意的な意見が多数を占めた一方、「職場の同僚が育休取得後復職しなかったら?」という質問には

女性で3割、男性では半数近くが「違和感がある」と回答。

 「理解はできるけど、実際に遭遇したらちょっと…

という本音が滲む結果となりました。

インタビュアー

アンケートを見てどう感じますか?

トイさん

制度の悪用だと感じる人が一定数いるのはわかります。

 

男性の方がナシ派が多いのは自分ごとではない人が多いからでしょうね。主夫や、男性の育休が増えれば、この割合も変わってくるんじゃないかな。

 

人って自分が経験しえないことには無関心になりますから。

インタビュアー

なるほど...

働き盛りの世代から寄せられたナシ派の意見にはこんなものがありました。

30代女性/正社員(子どもなし)
育休って当然の権利なわけで、取らせないとか違法なわけで…。もちろん助け合って子育てしやすい社会にしたいですよ...。子どもってかわいいし。

でも、大企業ならいざ知らず、中小なんて最低限の人で回すしかないわけじゃないですか、穴埋めするには誰かがその分働くしかないわけで。新しい人雇って育休明けたらクビにするわけにもいかないし。

結局独身とか子なしに負担が回ってくるんですよね。

で、本人は働いていない間もお金もらってるんでしょ?そりゃ反感買うよな、って思います。
40代男性/正社員(子どもあり)
育休は復職を前提とした制度のはずです。籍を残しているわけだし、復職しないなら育休という制度を使わずに退職すべきです。

他の人間に負担がかかるので、そのことを考えられない人なんだろうなと感じます。

 仕事押し付けられるのは誰だって嫌! 

トイさん

わたしだって、人員配置をされない前提なら「困る」って答えますよ。仕事押し付けられますしね。

 

その前提が違えば反応は変わってくるはずです。

 

有期の社員を確保するなり、デジタル改革をするなりで、労働力を補うのは経営側の責任です。

 

仲間を集めて組織を変えるために動いた方がいいですよ。一人の意見だと受け入れられなくても結託すれば通ることはあります。

▼人ってそんな簡単に雇えない!?

インタビュアー

40代、50代の管理職の方たちからは人なんて簡単には雇えないという意見もありましたがどう思いますか?

トイさん

できないと思い込んでるんだと思いますね。

 

優秀なフリーランスだったり、派遣社員を入れていくことを、前例がないからしていないだけです。

インタビュアー

有期の社員では、任せられる仕事や育成のプロセスが違うので、接し方やかけられるコストも違ってくるのではないですか?

トイさん

それは難しい問題ですね...。

 

ただ、子どもすら産めないその職場異常じゃないですか?

 

その理屈でいくと誰も子どもを産まなければハッピーですが、その職場は異常ですよ。

そんな職場異常なのでは? 

インタビュアー

せめて育休が終わったら戻ってきてほしい、ということだと思います。

トイさん

うーん...ただ、思ったより子育てが大変だとか、生まれる子に障害があるとか、これまでのキャリアを捨てて、泣く泣く退職や転職を選ぶ人が大半だと思うんですよ。

 

例えば、自分が倒れた時に誰も肩代わりしてくれないよりは、半年入院しても戻ってこれる方がいいし、結果的に戻れなくても許される職場の方がいいですよね。

 

育休産休に限らず自分が長期で職場を離れるリスクなんて誰にでもあるので。

▼経営者って弱い立場。止める権利は絶対にない。

インタビュアー

平成30年度雇用均等基本調査によると、育休取得後退職した女性は10.5%です。この数字についてはどう思いますか?

トイさん

少ないですね。世の中の親はほんとに頑張ってます。

 

これからは男性だってどんどん育休をとる時代です。いずれ取らない人類はいなくなるはずです。

 

そうなれば、育休後に退職する人たちも増えるかもしれない

 

企業はそれでも仕事が回る仕組みを考えていった方がいいです。

インタビュアー

トイさんは起業家でもありますが、従業員が育休後復職しなかったらどう受け止めますか?

トイさん

残念だけどしょうがないです。

 

正直ワーママさんがいてくれると助成金とかもらえそうだし、いてくれるだけでありがたい面もあったりするんですけど。優秀な人ならなおさら...。

 

でも辞めるって本人の意思なんで、経営者って弱い立場なんです。止める権利は絶対にないので。

インタビュアー

違和感は感じない?

トイさん

仕方ないですよ。

 

でも、「いつか気が変わったら戻ってきてねぇ」とは言うと思います。

 

失恋に近いですね。「別れたいっていうならしょうがないよねぇ」って(笑)

 別れたいならしょうがないよねぇ

法律解説:法的には問題ないが給付金もらえない場合も

今回議論になっているのはあくまでモラルの問題であり、育休後に退職しても法には触れません

 

ただし、はじめから復職しないつもりで育休を取得した場合、育児休業給付金はもらえません。返金を求められることもあります。

 

なお、復職するつもりで育休に入っているのであれば、育休後に結果的に退職・転職しても育児休業給付金はもらえます。返金する必要もありません。 

2. 「育休後のキャリアが不安」な人は8割

2021年、第1子となる0歳の子どもがいる女性110人に行った意識調査株式会社明日香によると、育休などで仕事から一時的に離れることでキャリアに不安を感じる人は78.2%に上ります。

インタビュアー

復職するとして、育休で1年や2年のブランクがあるわけですが、仕事で不利になったりしませんか?

トイさん

不利になりますよ育休産休をとるという選択をしたのであれば仕方がないと思います。

「男女問わず、そこは同じ」って、なかなかシビア。

トイさん

ただ、遅れるのは仕方ないにしても、「出世の道が絶たれる」ということはなくなるといいと思います。

インタビュアー

実際出世が絶たれるパターンもある?

トイさん

ありますね。別部署に回されて、そこは出世が望めないルートになっているとか。

 やるせないですね…

▼バリキャリは仕事と育児両立できる? 

インタビュアー

トイさんの周りはバリキャリが多いと思いますが、仕事と育児の両立って現実的に可能だと思いますか?

トイさん

うーん、一回辞めるって場合は多いかな。

 

ものすごく働ける女性も、育児の方がつらかったって口をそろえて言うんですよ。寝てくれない子どもを相手に業務と両立っていうのは相当きつい部分はあると思います。

ハードな仕事と育児の両立はやっぱり相当きついらしい... 

インタビュアー

退職する人が多い?

トイさん

ご家族の支援があったり、ベビーシッターを雇う場合は別ですね。

 

わたしなら自分の月給なくなる思いでベビーシッター雇いながらなんとか働き続けるかなと思います。それがむなしい、つらいというのはあると思いますけど。

インタビュアー

復職後、体力的に楽な別部署に異動させられ、やりたい仕事ができないという声も聞きます。

トイさん

その場合は復職が難しくなって転職してしまうでしょうね。

 

わたしだって、職場を抜けて戻ってきた時に、「今までのスキルを活かせない場所で一生働いてね」って言われたら転職を考えると思いますよ。

インタビュアー

企業が、「この会社で働き続けたい」と思える環境を整えるのが大切?

トイさん

それは現実的に難しいので、退職や転職を前提に仕組みを組んでいいと思います。

 

それを責めない環境の方が大事です。

退職しても責められない環境づくりを!

▼辞めるときは会社になんて言えばいい? 

インタビュアー

実際退職ってめちゃくちゃしづらいと思うんですけど、会社に何と伝えれば角が立たないでしょうか。

トイさん

正直に言えばいいと思いますよ

 

ただ、繁忙期は避けますかね。忙しいど真ん中で言われたら「は?」ってなると思うので。

 

あと直前はやめてほしいですよね。引継ぎが厳しい。

 

できれば数か月前に言った方がいいですが、「復職の直前に夫が転勤」とか、事前には分からないこともありますよね。

3. 男性だってありうる!育休中の転職活動で気を付けること

育児がはじまれば生活環境が変わるのは必然。

時間の制約などから休職前と同じ環境で仕事ができないと考え、転職するケースも考えられます。

インタビュアー

育休中に転職活動をすることはどう思いますか?

トイさん

今の職場の条件が合わなければ、転職もやむを得ないと思います。

 

それを用意できなかった会社の方が問題なので。

 

ただ、事前に交渉してみた方がいいですね。それでもだめだったら転職もしょうがないと思います。

インタビュアー

応募先からはどうみられることが想定されますか? 

トイさん

お子さんを抱えていると急にお休みをとることも多くなるので、正直一般的な転職活動より落ちやすいです。

 

でもそこで迷惑だっていう会社とは、いずれ揉めるので入らないほうがいい

 

逆に言えば通してくれる会社は育児に配慮してくれる会社の可能性が高いです。

インタビュアー

育休中の転職活動で気を付けることはありますか?

トイさん

たくさん落ちる前提で動くことですね。

 

特に、これまで内定をとれてきたタイプはショックを受けると思いますが、まだ社会が未熟なだけなので、

 

あなたを嫌いなわけでも、子どもを持つ親が嫌いなわけでもありません。

 

そもそも心身ともにきつい時期のはず。自分が優秀かどうか以上のことで判断されるので、追い込みすぎないようにして頂きたいです。

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4. まとめ

ありがとうございました!

会社の都合で育休をとりづらい人もいれば、子どもを授かれない人もいる。

しわ寄せがくるのは独身者だと感じることもある。

そんなことを考えれば今の育休制度は完璧ではないのかもしれません。

不平等感を持つ根底にある「自分ばかりしんどい思いをしている」というトゲトゲした感情の矛先は、育休中の同僚や、芸能人といった個人に向けられるべきではないのでしょう。

「子どもを育てる人」、「仕事をする人」どちらが偉いでもなく、まずは半径5メートルの人間にやさしくなることが、自分にとっての生きやすさにつながると感じました。